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別府の海風
別府の海風
2010年8月21日
別府のそよ風に吹かれつつ、僕は日記を書く。
今「鮮やかな闘い」の手を休めて10分休息を取っている。とはいえ、五分も経たないうちに、別の日記を書き始めざるを得なかった。そう、あの素晴らしい大人向けの食堂に来ている。スターバックスにいると、僕はどうしても書かずにはいられない。地球はスターバックスを中心に自転するのだ。
別府のスターバックスは海の近くに位置し、外にでもいくつかのテーブルと椅子が備えてある。それでこのスターバックスでは、好きな飲み物を飲みながら風に混ざり合う海と温泉の匂いを楽しむことが可能だ。別府湾に向いたテーブルに座って美味しいコーヒーを手にしながら、僕はクラシック音楽を聴くのが非常に好きだ。全く教養がないながらも、自分はかなり教養がある人だと思わせてくれるからだ。温かい陽射しを浴びて美しく香る風に吹かれつつ、コーヒーの苦さとモーツァルトの「トルコ行進曲」に五感が満たされていく。この瞬間は完璧だ。
このスターバックスの最も目立つ特徴は、来店する外国人の比率である。近くに地獄めぐりといった観光地が多々ある上に、店の前でバスに乗ると、30分も経たないうちに5割を留学生が占めているAPU立命館大学に着く。その結果として、来店する人のうち、半分以上は日本人ではないと言っても過言ではない。この独特な現象は別府のスターバックスを面白くするのだ。噫、ワーグナーの弦楽合奏よ。
英語はもとより、日常の日本語が大体分かる白人にとって、この店はユーモアに富んだところだ。殆どのスターバックスに行くと、飲み物を買う時に、店員が日本語で話してくれる。ここは違う。韓国から来る多くの観光客のせいにしろ、日本語を勉強し始めたばっかりの留学生のせいにしろ、店員は僕に向かって英語で話し始める。今まで多くのオーダーを日本語で馴らしてきた僕は唐突に「Hi, what can I get for you?」と言われてしまうと、英語が母国語である僕にとって恥ずかしいことであるが、多少冷静を失ったことを告白する。「熊蜂の飛行」のクレッシェンドのごとく、いつの間にか国際的な視聴者に取り巻かれた僕の緊張感は掻き回されていく。
リズムを崩した僕は久しく耳にした英語を聞こえていない振りをし、いつものように日本語で頼んでみる。すると、態と敬語が省かれた「店の中で食べますか」という返事が尚更面白くて、一段と僕の意表を突く。何語で、何を言えばアイスコーヒーをもらえるのだろうか。レジの前で三次方程式を解いているように、僕は無意識の内に視線を天井に向け、最も適切な言葉を見つけるために脳を働かす。何とか注文をやり遂げてBLTサンドイッチ and アイスcoffeeと共に外のテーブルへ移動している最中に、余りの混同に、何か大切なものを忘れてしまったかのようにレジの方を振り返る。エリーゼのために、いや、コーヒーのために。
今僕は外国人の虹に囲まれている。左側には、二人の白人がいる。日本語をびっくりするくらい上手に話す、灰色のTシャツを着ているアメリカ人っぽい男の人。彼の隣に座っている、日本語をびっくりするくらい下手に話す、ぽちゃぽちゃした女の人。僕の日記に登場することを知らず、彼らは気楽に卑猥な話をし続ける。片耳で宙を飛び交う中傷を何気なく聞いているうちに、もう一方の耳にリストの「愛の夢」が雨が降り出したように流れ始める。落雷でまっ二つに切り裂かれたような気分になり、僕は人間の感情の幅広さに深く感動する。
右側では、三人のベトナム人が煙草を吸いながら快活に言葉を交わす。当然ながら僕には彼らの会話が分かる訳がないが、おそらく、昨夜酒場で起こった出来事について話しているのだろう。少なくとも、彼らの身振りがそう暗示している。青空に舞い上がる煙草の煙を眺めるともなく、僕はコーヒーを一口啜って小さく笑った。別府の夏とヴィヴァルディの冬に導かれ、既に天に昇った心地がした。
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鹿児島抹茶フラッペBy Dogen on August 17, 2010 | No Comments
2010年8月14日
鹿児島中央駅前のスターバックス
僕は今、世界一人気のある大人向けの食堂に来ている。そう、僕は今スターバックスにいる。
題名のごとく、今回の文章は鹿児島県で書かれている。ここまで来るのに、かなり時間がかかった。出発してからは5、6時間しかかからなかったものの、バイク経由で大分出身ですら知らない豊後大野市から鹿児島まで行く勇気を奮い立たせるのは、僕にとってなかなか難しいことであったのだ。天気のせいにしたり、忙しすぎると自分を甘やかしたり、という言い訳生活が数ヶ月も続いた。挙げ句の果てに、生徒の一人に「え?まだ行ってないの?もう、夏だよ」と言われ、たとえ雷であれ今週末こそ、行こうとやっと決心した。今日僕は夏の陽射しと椎名林檎の美しい旋律を浴びながら、桜島を一周した。感激の至りだったと言っても過言ではない。二十分くらい前に、ついにスターバックに到着した。
この日記を書くのは僕にとって、とてつもなく愉快なことである。何しろ、5月に入ってから、自分の最も不得意な分野である、日本語の語彙に注意を集中しようと決意したからだ。そういう訳でおよそ三ヶ月、昼夜iPodタッチを手にし、JAPANESE FLASHやKanji Flipといった暗記ソフトに泪を漏らすまで夢中になっていた。そんな自分は3、4千個の単語を身につけたものの、ここ数ヶ月間ちゃんとした日記を一回も書いていない。今日新たに得た知識を生かし、いつものようにスターバックスについて延々とぼやいていきたいと思っている。宜しくお願いします。
今一番気になっているのは隣に座っている、三十代に見える摂食障害気味の女性のことである。目の前に置いたノートを眺める彼女は、もう数分間、微動だにしないのだ。まばたきさえしない。それに、イヤホンから流れる音楽がリズムよく僕の聴覚を阻み続けるから、彼女が息をしていることも、確認が出来ない。彼女の不思議な行動は僕の思考を最も滑稽な結論へ導いていく。抹茶フラッペ飲んでいる最中のこのお姉さんは、死んでいる。僕はそう思い小さく笑った途端、彼女は忽ち荷物を纏めて立ち去ってしまう。今日鹿児島で起きた彼女の麻痺は結局、真っ赤な西日が桜島の影に沈むごとく、謎に終わる。なんて素敵な去り方なのだろう。
僕がまた外人の雰囲気を漂わせているせいか、彼女に代わるものは来ない。このスターバックスは窓付けのカウンターも含め、約15のテーブルを備えている。その中の一つは、僕とコーヒーの歴史が生半可に描かれた壁が塞いでいる、大きな勉強向けのテーブルである。何分経っても、淋しいことに唯一付き合ってくれるのは、麻痺患者の温もりだ。この鬱陶しい現実を軽く受け流し、斜め前に座っている粋な帽子に潜んだギャルの描写をし始める僕。
とにかく顔が小さい。という表現は、かなり長い期間僕を狼狽させた。英語では決して褒め言葉にならない「顔が小さい」というフレーズを初めて言われた時に、正直言って僕はかなり傷ついていささか自信を失った。そして留学生活が過ぎるにつれて、知り合いが増えれば増えるほど尚更自分の顔に対する劣等感に襲われ、より深い自信喪失に陥った。一時、鏡を見る度に、自分の顔の「足りなさ」に戸惑いを覚えた。斜め前に座っているギャルに「顔がちっちゃ」と言ってみたら、彼女も落ち込むのだろうか。
やっと来た。テーブルの反対側に、大学生らしい二人の女性が優雅に腰をかける。睡眠不足な僕は今、自分が迷って偶々このスターバックスに転がり落ちたという澱んだ顔をしている上に、外人だから、日本語が出来ると思われている筈がない。そう考えてみると僕ですら、自分がここにいることをかなり奇妙に感じ始めた。自己主張が霞みつつある僕は、テーブル越しの出来事を歴史のページに書き残すのだ。
左の細い子は化粧の覆面をし白いシャツを着、ひときわ重なり合ってちっとも似合わないマフラー一枚とネックレス五つで首を隠している。一個のネジが飛び出したように、彼女は延々と信じられないスピードで言葉を吐き続けている。僕はこういう人が幾分苦手だと言わざるを得ない。何故かというと、言葉を大事にしないからだ。まあ楽しんでいるようだから別にいいと思うけど、ネックレスとマフラーを活用し彼女を天井の装飾にした方が面白いかも。彼女の声が降り注ぎ、思わず僕の想像がより冷酷な方面に赴いていく。右の子は黒いスポーツコートを着ていて、ひたすら頭を縦に振り、押し寄せる勢いにさらわれていく。
よし。たった今、スターバックスで起こる僕が最も不思議に思う現象が生じた。そう、二時間ほど前に店内にいた二人の客が、一回出口を通り、そして暫く経ってから、また入ってきたのだ。僕にとって、再び入ってくる客と目を合わすのは興奮してしまうくらい楽しいことである。いかに遥か遠いところに行こうと、これほど恥に満ちた表情はなかなか目につかない。ところがとうとう彼女と目を合わした瞬間、いかにも反対の結果が出たのだ。友達の肩を軽く叩き、彼女は指を宙に上げ、それを大胆に直接僕の方を差す。周りの客や、一人の店員に至るまで、僕の方に視線を向ける。そんな馬鹿気た展開。僕の小さくて物足りない顔にしっかり張られた肌が熱く火照ってくるのをつくづく感じる。何回来ても、僕はスターバックスという謎を解くまい。
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小説の書き方:順番の大切さBy Dogen on July 15, 2010 | No Comments
理沙、
またアドバイスが遅くなってごめんな。長い間自動車学校でかなり忙しかったので、自分の時間は殆どなかったんだ。日本語で書くことさえ、もう三週間くらいやっていないような気がする。
今日は、物語の順番について説明したいと思っている。順番をどういう風に並び替えても、物語の出来事自体は変わらない。先ずこれをしっかり頭の中に叩き込んでください。唯一変わるのは、「読者への伝え方」だ。章の順番によって、話のテーマが伝わるのだ。
これを説明するために、僕が書いた「カラハン湖の渡り」という小説を生かしたいと思っている。話の出来事は下記のように流れる
1。ショーンという15歳のアイルランド出身の少年は、学校と家で、彼の韓国に対する情熱のせいで苛められている。
2。ところが、彼は周りの人の悪口を気にせず、一人で韓国語を勉強し始める。
3。ある日、彼はネットで韓国語の勉強支援サイトを見通しつつ、国際ペンフレーンドサービスを発見し、プロフィルを創造する。
4。少女のキムがショーンのプロフィールを発見し、彼にメールを送る。二人は日常的にメールのやり取りをし始める。
5。ショーンは成長していく内に、ニキビが酷くなり、歯の矯正も始める。その結果として、彼への苛めはさらに増大し、彼は自信をますます無くす。
6。そんなショーンはいつもキムに内心を打ち明ける。同じ様な情況にいるキムは、ショーンの感情に理解を示す。
7。一年間以上、二人はメールのやりとりを続ける。その内、ショーンは韓国への飛行機チケット目標にし、アルバイトは始める。
8。ある日、キムはショーンに愛の告白をする。感動したショーンは、お金が貯まるのが遅すぎると感じる。ついにショーンは、今までキムについて一切話さなかった、自分の親と友達にキムのことを告白すると決心する。
9。周りの人は彼の勇気に深く感心し、ショーンが早く韓国に行けるように、彼にお金を貸す。
10。彼は飛行機に乗って、韓国へ出発する。
11。彼は飛行機を降りて、キムと会う。これは年代順に並べた話の出来事である。しかし、これは僕が書いた順番ではない。話の順番を少しでも変化させると、話のテーマが随分変わるのだ。それを説明しよう。
例えば、
10。彼は飛行機に乗って、韓国へ出発する。
1。ショーンという15歳のアイルランド出身の少年は、学校と家で、彼の韓国に対する情熱のせいで苛められている。
2。ところが、彼は周りの人の悪口を気にせず、一人で韓国語を勉強し始める。
3。ある日、彼はネットで韓国語の勉強支援サイトを見通しつつ、国際ペンフレーンドサービスを発見し、プロフィルを創造する。
4。少女のキムがショーンのプロフィールを発見し、彼にメールを送る。二人は日常的にメールのやり取りをし始める。
5。ショーンは成長していく内に、ニキビが酷くなり、歯の矯正も始める。その結果として、彼への苛めはさらに増大し、彼は自信をますます無くす。
6。そんなショーンはいつもキムに内心を打ち明ける。同じ様な情況にいるキムは、ショーンの感情に理解を示す。
7。一年間以上、二人はメールのやりとりを続ける。その内、ショーンは韓国への飛行機チケット目標にし、アルバイトは始める。
8。ある日、キムはショーンに愛の告白をする。感動したショーンは、お金が貯まるのが遅すぎると感じる。ついにショーンは、今までキムについて一切話さなかった、自分の親と友達にキムのことを告白すると決心する。
9。周りの人は彼の勇気に深く感心し、ショーンが早く韓国に行けるように、彼にお金を貸す。
11。彼は飛行機を降りて、キムと会う。この順番だと、読者はより早く惹き付けられる。ショーンの歴史を全く知らなくても、飛行機に乗って、緊張している彼のその存在だけが十分読者に興味を持たせる。彼はどこに行くのか?どこから出発したのか?彼はなんでそんなにどきどきしているのか?この順番だと、物語が最初から読者を「どうして、何でこうなっているのか?」という質問をさせる。それから、惹き付けられた読者が2章から物語の背景を段々分かってくる。それからもちろん、利口な読者はキムが登場する時点で、「そうだ、ショーンは一章で飛行機に乗っていたのは、韓国への飛行機だったんだ」と理解できるので、そこからの開展がより面白くなる訳だ。少し鈍感な読者は大体、9、11章で話の流れを繋ぐ。この順番だと、ショーンの精神的な成長が重視される。
一方、
4。少女のキムがショーンのプロフィールを発見し、彼にメールを送る。二人は日常的にメールのやり取りをし始める。
1。ショーンという15歳のアイルランド出身の少年は、学校と家で、彼の韓国に対する情熱のせいで苛められている。
2。ところが、彼は周りの人の悪口を気にせず、一人で韓国語を勉強し始める。
3。ある日、彼はネットで韓国語の勉強支援サイトを見通しつつ、国際ペンフレーンドサービスを発見し、プロフィルを創造する。
5。ショーンは成長していく内に、ニキビが酷くなり、歯の矯正も始める。その結果として、彼への苛めはさらに増大し、彼は自信をますます無くす。
6。そんなショーンはいつもキムに内心を打ち明ける。同じ様な情況にいるキムは、ショーンの感情に理解を示す。
7。一年間以上、二人はメールのやりとりを続ける。その内、ショーンは韓国への飛行機チケット目標にし、アルバイトは始める。
8。ある日、キムはショーンに愛の告白をする。感動したショーンは、お金が貯まるのが遅すぎると感じる。ついにショーンは、今までキムについて一切話さなかった、自分の親と友達にキムのことを告白すると決心する。
9。周りの人は彼の勇気に深く感心し、ショーンが早く韓国に行けるように、彼にお金を貸す。
10。彼は飛行機に乗って、韓国へ出発する。
11。彼は飛行機を降りて、キムと会う。この順番だと、キムを巡る神秘がハイライトされる。それに、よりロマンチックな流れ方である。最初からショーンの苦労を紹介するのではなく、恋人となるキムを現す。話の絶頂で起こるショーンの告白は自分の成長のための行為というよりも、キムに対する愛の表し方である。
最後に、
5。ショーンは成長していく内に、ニキビが酷くなり、歯の矯正も始める。その結果として、彼への苛めはさらに増大し、彼は自信をますます無くす。
6。そんなショーンはいつもキムに内心を打ち明ける。同じ様な情況にいるキムは、ショーンの感情に理解を示す。
7。一年間以上、二人はメールのやりとりを続ける。その内、ショーンは韓国への飛行機チケット目標にし、アルバイトは始める。
1。ショーンという15歳のアイルランド出身の少年は、学校と家で、彼の韓国に対する情熱のせいで苛められている。
2。ところが、彼は周りの人の悪口を気にせず、一人で韓国語を勉強し始める。
3。ある日、彼はネットで韓国語の勉強支援サイトを見通しつつ、国際ペンフレーンドサービスを発見し、プロフィルを創造する。
4。少女のキムがショーンのプロフィールを発見し、彼にメールを送る。二人は日常的にメールのやり取りをし始める。8。ある日、キムはショーンに愛の告白をする。感動したショーンは、お金が貯まるのが遅すぎると感じる。ついにショーンは、今までキムについて一切話さなかった、自分の親と友達にキムのことを告白すると決心する。
9。周りの人は彼の勇気に深く感心し、ショーンが早く韓国に行けるように、彼にお金を貸す。
10。彼は飛行機に乗って、韓国へ出発する。
11。彼は飛行機を降りて、キムと会う。この順番だと、リーダーを惹き付けるのはショーンの苦労だ。昔若かった読者はショーンと同情を禁じ得ないようだ。それから読者は二人の歴史について興味を持つようになるわけだ。そして話が遡り、徐々に現在に近づいてくる。二人の歴史がとうとう分かったら、急にキムの告白が登場し、悠々と連れられた読者の意表を突く。最初から酷い行為を起こしたショーンの周りの人こそが、最後に優しく見られるのだ。このバージョンだと、一人、二人の話ではなく、人情の物語である。
上の説明を見ればわかるように、順番を問わず、物語の出来事自体が全く変わない。ただし、順番により話のテーマや、読者に伝わる感情は大きく変わる。同じ物語でも、物語り方が略無限だ。従って、話の出来事を決めた上で、たっぷりと時間をかけて順番をきちんと決めるべきだ。最も魅力的な順番を選ぼう。
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久しぶりのAdviceBy Dogen on May 26, 2010 | No Comments
理沙、
東京事変の「閃光少女」を聴いたことがある?4週間前に椎名林檎のライブに行ってから、僕は彼女の音楽を聴きすぎて寝不足だ。嵐とEXILEのような音楽とかなり違う種類だが、椎名林檎の歌詞は非常に麗しいので、作家として一目に足る。東京事変の「化粧直し」もお薦めだ。
さて、小説のアドバイスに入ろう。あ、その前に一応言っておくけど、今日はほんっとに眠いから今回のアドバイスは日本語の間違いが圧倒的に多いかもしれない。内容自体は多分そんなに変わらないだろうと思うけど、まあ、どうだろう。笑。
今日は語り口、すなわち語り手の声(これは作家の文体ではなく、語り手の物語に対する態度である)について少々説明したいと思う。言うまでもなく、これは小説家として非常に大事な道具だ。僕にとって、一致した語り口で小説を書くのは大変難しいことである。
前に説明した「見方」がカメラだとすれば、語り口がレンスである。見方と同様に、どんな語り口を利用するを問わず、物語の出来事自体が変わらない。ただ、語り口に通じて読者の話に対する気持ちや見解がかなり変わるのだ。
と言っても、まだ相当分かりにくいと思うので、例を一つ挙げる。
「また引っ越すのか。お母さんが病気になってから、私たちは何回も引っ越さなければならなかった。私はいいけど、妹にとってはかなりつらいことなんだろう。こんな貴重な時に何回も友達を作り直すなんて、とんでもない。いったい何考えているんだよ、父さん。そう思って私は再び涙を堪え、崩れそうな家から飛び出した。
息が出来なくなるまで走っていた。父さんも、入院している母さんも、いつも泣き出しそうな顔をしている妹も、しばらくみんなのことを忘れたかった。闇に覆われた、あの暗い世界から逃げたかった。ふと気づくと、私は塔のよう樹に囲まれ、薄暗い森の中心に立っていた。いったいどこまで走ってしまったんだろうか。自分の行方が分からなくて、こころの奥で僅かな恐怖が芽生える。とその時、十メートルほど前、でっかい影がそっとこっちへ樹の間を擦り抜けてくる。それを見ると身の毛がよだつ。この森にはウサギより大きい動物はいないはずだ。ドン、ドン、ドン。巨大な影がどんどん私の方に突撃してくる。恐怖に襲われた私は足を動かせない。助けて、お父さん。助けて、お母さん。誰か、助けて。思わずそう呟き、深い森の中心で気を失ってしまった」
以上は僕が勝手に暗く解釈した、「隣のトトロ」の場面の一つである。このとんでもない実例は語り口の力を示している。話の出来事自体が全く変わっていない。ただ、この語り口を通して映画にはなかった主人子の悩み、惑い、恐怖などを、鮮明に感じることが出来る。何故かというと、暗い語り口を選んだからだ。
語り口に関して一番大事なのは、語り口を変えないことだ。ストーリーが進むにつれて語り口が何度も変化してしまうと、読者を混乱させるからだ。語り口は急に一変してしまうと、まるで違う小説を読んでいるように感じられる。言うまでもなく、これはとても良くないことだ。物語の最中に見方が変わらない限り(これも避けたほうがいいと思うけど)、語り口は一致すべきだ。そういうわけで、小説を書く前から既に語り口を決めているべきだ。暗い話を書きたかったら、最初から暗く書いて。一方、明るい話を書きたかったら最初から明るく書いて。きちんとこうすると、話がどうなるかを問わず、読者にとって本格的な小説を読んでいるように感じられる。語り口を決めずに書いてしまうと、優柔不断な素人が作った謎のようなものになる。
小説を書く前に、見方と語り口について決断するべきだ。そうしないと、僕のように何回も同じ段落を書き直さなければならないからだ。苦笑
それでは。
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夢By Dogen on April 27, 2010 | 15 Comments
初めまして、道元です。
昨日、僕は自分の未来が見えた。昨日、東京事変のライブに行ってきた。

13歳の時、僕は「SOFTBALL」というバンドをネットラジオで発見した。その時までの僕は特にやりたいことも、未来の夢もなく、何となく白黒の日々を過ごしていた。でも「SOFTBALL」を発見したら、鮮やかな色が灰に覆われた僕の生活に降り注いできたのだ。
これは凄い、と思った。これは素晴らしい、と思った。この音楽の意味を知るべきだ、と思った。そして、僕はバイトで貯めていたお金を全て一気に遣い、SOFTBALLが発売したCDを全て日本から輸入した。WARAWABEというシングルの最後に、「とこしえに」という曲が入っていた。その曲の響きが耳に入った瞬間、日本語を勉強しようと決心した。
周りの人からよくいじめられていた。何であんな音楽聴いてんだよ、言っていること分からないくせに。SOFTBALLなんて大したことないんだぜ、あんなレベルのバンドなら山ほどあるんだよ。親にまで言われた。祖国の音楽を聞けば?でも僕は既にSOFTBALLの音楽に魅了されて、他のアーチストを聴けなくなったほどだった。1年くらい僕は毎日SOFTBALLを聴き、日本語を自習していた。いつか、僕は日本でSOFTBALLのライブに行く。この夢を持つようになり、鮮明な自分の世界を前進した。
残念ながら、僕が15歳になった頃にSOFTBALLは解散した。当時の僕はほんの少ししか日本語が出来なくて、SOFTBALLのホームページに行ったら解散したことしか理解出来なかった。そこでかるい鬱病に陥ってしまった。しかしここまで来ると、さらに前へ進むしかないと涙を堪え、日本へ行こうという気持ちを大学まで持ち続けた。
日本語を専攻することって、可能ですか?いやー、一応あるんですけどそうすると卒業後の就職機会はかなり限られちゃいますね。と、カウンセラーに数回言われた。そうなんだ。。じゃ何を勉強すればいいでしょうか。ビジネスなんかどう?と尊敬していた先輩が僕に勧めてくれた。国際ビジネスを専攻したらきっと日本で働ける仕事がたくさんあるよ。そうかもしれないなと僕は思い、ワシントン大学の優秀なビジネススクールに入学するために、一年ほど経済学ばっかり勉強していた。しかしその内に自分の世界がもう一度徐々に澱んできた。僕は本当にビジネスが好きなのか?と毎日思いつつ、重い足取りで授業に通っていた。僕ってビジネスマンになりたいのか?
二年生になり、選択科目として日本語を勉強し始めた。これだ。僕にはやはり日本語しかないんだ。そう確信してすぐビジネスの授業を全て落とした。親にも先輩にもかなり怒られたが、再び毎日が明るくなり、活気がどんんどん湧いてきた。次は留学だ。流暢に話せるようになりたかったら、僕には留学が必要に違いない。そう思い、慶應大学の交換留学プログラムに申し込んだ。三ヶ月後、留学カウンセラーからOKサインが出た。
来日し、毎日一生懸命日本語を勉強した。それでどんどん話せるようになり、どんどん読めるようになった。ある日、僕は昔よく聴いていたSOFTBALLのホームページに行ってみた。すると、思い掛けない情報が目に入ってきた。秋茜、東京ツアー決定。
秋茜?というのは、SOFTBALLを解散した歌手の新バンドだった。SOFTBALLが解散し、彼女はすぐ秋茜を作ったということだった。もちろん、当時日本語を殆ど読めなかった僕には、それが分かる筈もなかった。ふとユーチューブで秋茜の音楽を聴いてみたら、一瞬にして中学校の頃の思い出に覆われてしまった。いじめられたことも、一人で机に向かって日本語を勉強したことも。そんな思い出がどんどん浮かんでくる内に、慶應大学生でいる自分はあることを決めた。それは秋茜の歌手に感謝の手紙を書くことだった。
僕はそうし、秋茜のmyspaceにメッセージを送った。それが彼女に届くかどうか、それから彼女がそれを読んでくれるかどうか、僕には分からなかった。とにかく今まで抑えられてきた感謝の気持ちを伝えてみよう。13歳の自分にそう説得され、心のこもった手紙を送ってみた。翌日、返事が来た。
東京に住んでいたその一年間に、結局秋茜のライブに10回も行った。どれも人生の絶頂のように感じられた。その上、バンドのメンバーと一緒に居酒屋に行ったり、一緒に違うライブに行ったりもした。僕が行った最後のライブで、秋茜は滅多に弾かない「とこしえに」を僕に弾いてくれた。数回もSOFTBALLのあの歌手と話す機会があった。ある時、居酒屋で隣に座っている彼女に尋ねてみた。
「何で歌手になりたかったんですか?」
そして、彼女はこう答えた。
「昔から音楽が好きだったから自然な流れだった。最初の頃ファンが少なくて生活はきつかったけど、その数人のファンのために、音楽を作り続けていきたいなと思った。私は話すのが苦手なんだけど、もし音楽で人に感銘を与えられたらそれは私にとって幸せだ。ステージの上から盛り上がっているファンの姿を見るなんて、本当に最高だ。私の兄はサラリーマンで、姉はOLだよ。二人とも幸せな人生を送っているし、お金には全く困っていない。でも二人はケビンが書いてくれたあの手紙のようなものをもらったことはないんだ。私はあれを読んだら涙が出るほど嬉しかった」
彼女にそう言われたら、僕は何だか現実を飲み込めない状態になってしまった。13歳の自分の夢の中を生きているんだ。そう気づくと、何をすればいいのか分からなくなってきた。僕は夢が叶ったんだ。今まで望んできたことは完璧に手に入ったんだ。これから、一体何をすればいいのか。人は夢が叶ったら、その後どうすればいいのか。どういう風に新しい夢を持てばいいのか。そんな味わったことのない奇妙な感情に覆われ、ものすごく不思議な気持ちになったのだ。
彼女の言ったことを長く、深く考えてみた。結局僕はその夜、作家になろうと決断した。彼女が僕に感銘を与えたように、彼女が褒めてくれた僕の文書を活かし、残っている人生で力の限り色々な人に感銘を与えていきたい、と。
でもその時から僕は何回も自信喪失に陥ったことがある。僕には小説家になれる才能があるのだろうか。外国語で小説を書くなんて、現実的な目標なのか。たくさんの人に褒められ、たくさんの人に笑われた。相当上手い、本当にへたくそ。日本人より上手い、小学生に負ける。どっちだ。僕の文は上手いのだろうか、下手なのだろうか。僕には出来るのだろうか、出来ないのだろうか。正直言って、昨日までそんな自分自身の声が邪魔してきたのだ。そして、昨日東京事変のライブに行ってきた。
僕はSOFTBALLが解散して半年くらい経ってから椎名林檎の音楽を聴き出した。なんて素晴らしい音楽だ。と、誰もいない部屋で思わず呟いた記憶がある。今もSOFTBALLの音楽は僕にとって特別な意味を持っているけれど、やはり椎名林檎は全く違うんだな、とすぐ分かった。生まれて初めて「天才」という言葉の意味を分ったような気がした。慶應に留学している間に東京事変のライブのチケットを手に入れられなかったけれど、秋茜の天国を遊んでそれで良かった。そして、昨日東京事変のライブに行ってきた。

椎名林檎がステージに現れた瞬間、鋭いものがぐさりと僕の胸を刺したように感じられた。その後も、言葉じゃ説明出来ないくらい感動的な演奏だった。すごかった。とても感動した。やっばい。超楽しかった。こういった表現じゃ僕が昨日受けた感銘を全く伝えられないので、経験した演奏については描写しない。代わりに、自分が気づいたことについて、これから延々と書きたいと思う。この日記はここから始まるのだ。
人間というのは複雑なものだ。人間が欲しがるもの、人間が嫌うもの、一体なんだろう。人はそれぞれの希望を持ち、それぞれの方向に向かっていく。人間は幸せに引っ張られていくのか、それとも恐怖に押されて進むのか。人間はどうやって夢を持つようになり、どうやって人間は感動するようになるのだろうか。人生の意味ってなんなんだろう。僕はあの夜、秋茜の歌手と話しているうちに、他人にやる気を起こさせることは人生の意味だとつくづく思った。しかし他人を感動させるために、どれだけ自分の幸せを捨てなければならないのだろうか。
現実的には、日本で小説家になるために、僕には誰よりも勉強することが必要だ。日本人より日本語が上手いって可能なんだろうか。もし僕は本当に小説家になりたかったら、これからは毎日目が痛くなるくらい勉強しないと無理に違いない。外国語で人に感銘を与えることって、最初に思っていたより随分難しいんだ。だから日本人をなめるなよ。芥川賞を目指しているのならお前は今より百倍くらい勉強しないと絶対に無理だぜ。これからは数年もかかるし。それでいいのか?全てを勉強に捧げてもいいのか?じゃなかったら、日本で小説家になれると思うなよ。甘すぎだから。はっきり言って本当の作家に失礼だから。もう一度自分に聞いてみろよ。残っている人生を執筆に捧げてもいいのか。昨日までそんな自分自身のか弱い声を常に耳にしていた。そして、昨日東京事変のライブに行ってきた。
いいんだ。ステージの上に立っている椎名林檎を眺め、ほんの一瞬にして確信した。この人のように、才能を尽くしたい。いや、この人のように、才能を尽くさなければならないのだ。全てを執筆に捧げてもいい。いや、全てを書くことに捧げるべきだ。既に夢を実行している僕だからこそ出来る。これから毎日死んだつもりで勉強してもいい。毎日涙が出るほど勉強しても、全然平気だ。僕はそうしなければならないからだ。あの時SOFTBALLに会ったのも、今椎名林檎の輝きが僕の胸を激しく刺しているのも、全てはそう示している。これは僕に与えられた使命だ。もうそういう風にしか考えられないのだ。
願っているよ。
貴方の夢は、どんなに濁る世界だって壊せないさ。
望んだ侭、突き進んで居て方位を誤ったら、そっと思い出して。
昨日、声を限りに叫ぶ椎名林檎を見つめていると、初めて鮮明に見えた。僕は絶対に小説家になるのだ。日本で小説家になるのだ。それはまるで毎日太陽が空に昇るのように、ごく自然なことのように思えた。僕は絶対に日本で作家になり、たくさんの人々に感動させるのだ。楽しい。これは楽しい!この気持ちは初めてだ!前より百倍くらい鮮やかな色が降り注いでいる。僕は虹色の滝を浴びている。まるで背中から翼が広がるように感じられる。まるで地面から飛び出せるように感じられる。汗が出るほどの落ち着けない気分なのだ。
今僕は東京事変の「生きる」という曲を聴き、最高に幸せだ。もう一回夢が叶うのだ。先ほどそう悟ると、久しぶりに日記を書きながら涙が溢れてしまった。
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スターバックス:3
2010年4月4日
博多駅前のスターバックス
天気予報がまたはずれ、太陽が雲のない空の中心に浮いている。ライブが始まるまで約四時間ある。せっかく天気がいいから、僕は珍しく外のテーブルに座っている。左手には店の入り口がある。誰かが店に入る、または出る度に、必ず目が合う。二週間くらい前のトイレ警備が思い起こされる。右の方から博多駅前の風景が広がってくる。道の反対側のターミナルからバスが蟻のようにがぞろぞろ出てくる。その中にはスピーカーが何個もついている右翼のバスが一台。それはまるで蟻の行列の真ん中に蜂がいるように目立った。
店の中には、美人が一人いる。実際、彼女は美人なのか、僕にはまだはっきり分からない。とにかく横顔が美しい。想像力を掻き立てるような横顔だ。僕は彼女に興味を持っているけれど、なんとなくこのままがいいと思いはじめる。彼女はぴったりした黒いスーツを着て、小さい鞄から取り出した書類をぱらぱらと目を通す。これによって、彼女は就活中なのだろうと僕は想定する。彼女は深いために息をつき、ぼーっと窓のそとを眺める。僕は彼女と話してみたい。彼女の悩みを聞いてみたい。きっと、僕は彼女を幸せに出来る。彼女は店に入る前に僕たちは他の客と同じように目が合った。彼女は僕のことに気づいたはずだ。彼女は僕のことを意識しているはずだ。
聴いたことがない曲がiTunesから流れ始めて、僕の彼女に対する妄想に激しく邪魔してくる。僕にはまだはっきりした感情がないその曲を聴きながら、リズミカルなバスの流れが次々に通り過ぎていく。僕にとって何だか面白い組み合わせだ。今度は5年間も聞いていない曲が耳に入る。最初の一秒目に、昔使っていたプラスチックのヘッドフォンと兄と平等に分けた寝室が真っ先に脳裏に浮かんでくる。僕は福岡の軽い風に吹かれ、シアトルの光景が見えてくる。
ここは案外国際的なところだ。韓国人と中国人に結構人気のある観光地みたいだ。十人が通りかかる内に、一人くらいは外国人だ。それから、たまにこうして白人も通りかかる。彼はまさに僕の嫌いなタイプの外国人だ。足取りには一片の自慢が入っていて、3歩を踏み出す度に想像の聴衆を見渡す。彼を見ているのは、うんざりしている僕だけだ。
僕はここに来て、非常に興味深い現象に気づいた。福岡では、美人と不細工な女性しかハイヒールを履かないということだ。その内に不細工の子が圧倒的に多い。可愛くはあるがやはり美人だと言い切れない子が数えられないくらい通り過ぎていくものの、みんなブーツ、あるいはスニーカーを履いている。10点満点の5点から8点までの女性の中では、ハイヒールを履いている人はいない。僕にだけは知らない理由があるのだろうか。
老けたくない。年寄りが通り過ぎる度につくづく思う。前かがみになったり、周りの人から無視されたらり、驚くくらい大きい声で独り言を言ったり、いくら踏み出していても前に進めなさそうな小さな歩を一歩一歩踏み出したり。いかにも死んでいるということだ。死ぬ時に本人がなるべく衝撃を受けないように神様が人間にこの淀み方を与えたのか。だとしたら、神様は優しいか、酷いか、僕は決められない。
二時だ。近くのテーブルに座ったサラリーマンが去っていってから、僕の近くには誰も座らない。という文を書き終えたところで、一人の男性が座ってきた。優しそうな人だ。
「すみません」
彼は僕の方に向き直って、びっくりしたような顔をした。
「少し荷物を見張ってもらっていいですか?」
「大丈夫です」僕は立ち上がって、トイレに向かった。大丈夫です。彼の言葉が耳に入ってくると、僕は二年前の元彼女のことを思い出す。彼女の家に行ったのは初めてだった。お母さんが色々と美味しいものを作ってくれた。食べ終わったら、彼女がトイレに行って、残された僕はお母さんと二人っきりになってしまった。少し気まずい雰囲気になって、お母さんは「もう少し食べますか?」と僕に聞いてきた。大丈夫です、と僕は答えた。
この場合だと、大丈夫です、という曖昧な返事は結局答えにならない。日本に来たばっかりだったあの時の僕は、もちろんそれを分かる訳がなかった。
もう少し食べる?とお母さんは再び聞いた。
はい、大丈夫です。と混乱した僕は再び答えた。
お母さんはそわそわし始めて、僕から視線をそらせてトイレの方を向いた。
何が起きているんだろう、と僕は英語で思った。
あの、もう少し食べてみる??
はい。食べます。少し荷物を見守ってもらっていいですか?
大丈夫です。今彼は僕のものを盗んでいるのかな。今彼女は何をしているのかな。トイレの前に立った僕の考え事。席に戻ったら、荷物は全て僕が残したままで、彼は携帯で話していた。僕は頭を下げて謝意を表し、腰を掛けて、しばらく元彼女のことを考え続いていた。
吏紗。今まで出会った人の中で、最も頭のいい。非常に話が面白い女性だったし、顔もかなり美しかった。と、吏紗について尋ねる当時の元彼女に言ってしまうと、爆発的に怒られた。そして、元気?という軽い挨拶のメールが二ヶ月ぶりに吏紗から来ると、当時の彼女に「もうメールを送らなくて良いから」という返事を送らされた。あれ以来僕は吏紗と音信不通。彼女はどこで、何をしているのだろう。たまに「ごめんなさい、本当はあのメールを送りたくなかったのだ。あなたは本当にすごい人だと今も思っている。傷付けてしまって本当にごめんなさい」というメールを送りたくなる。しかし、僕はそのメールを送ることができない。何故なら、彼女の悪意に値することをしてしまったからだ。
僕はお茶を飲み干し、紙カップをゴミ箱に捨てた。
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首筋
首筋
僕は壁が非常に薄いアパートに住んでいる。二階建ての二階にある角部屋で、つい一昨日まで隣の部屋に誰も住んでいなかった。真下の部屋でヤマハのバイクに乗る足の短い男と俺は見たことがない彼の彼女が音を立てずに暮らしている。二人は部屋にいる間絶対に話さない、という契約でもしたのではないかと思うくらい静かだ。それで一昨日まで、僕の近所は音のない空気だけだった。しかし一昨日、新しい人が引っ越して来たのだ。
女性だ。よし、もらった!という訳ではない。実は彼女の顔はまだ見たことがないのだ。首筋なら、一回はある。一昨日小説の勉強を終えてイヤホンを抜くと、女らしくて穏やかな声が壁から漏れて耳に入ってきた。すると、僕はソファから跳び上がってロフトの低い天井にバタンと頭をぶつけたのだ。彼女は聞こえただろうか。聞こえなかっただろうか。いや、僕にあんな小さな声を聞けるのだから、彼女にも俺の頭に起きた衝突が聞こえたに違いない。このださくて鈍い音が俺の第一印象になるのだろう。
トン、トン、トン。彼女がロフトから降りて、キッチンに入った。俺は彼女の音を追いかけ、自分のロフトを降りて、自分のキッチンに入った。その時、部屋の間には壁ではなく、僅かに時間がずれた鏡があるように見えただろう。俺はそう思い、彼女の声を探した。ガチャッと、ドアの音だ!チャンスだ!ドアの中心にある小さな確認窓を覗き込み、息を止める。ガチャッと、彼女のドアが閉まる。ふと見ると俺の部屋の鍵が閉まっていないのに気づく。まずい。彼女がこのドアを開けたら、俺が彼女を観察していることがばれてしまう。しかし、今更鍵を閉めたら彼女は音に気づくはずだ。でも彼女は俺のドアを開ける訳がない。だけど万一ドアを開けたら俺は変態だと思われる訳。どうしよう。手が鍵に届くか届かないところで、彼女は俺をいじめているように顔を反対側に向けてさっとドアを通っていった。俺には彼女の首筋しか見られなかった。10秒くらい経つと、俺は鍵を閉めてロフトに戻った。
昨日、壁の向こうから音は全くなかった。まるで俺の寂しさと想像力が協力して彼女の存在を勝手に作ったようだった。6時に耳を壁に押し付けると、むしろ何も聞こえなくなって恥ずかしくなるだけだ。7時にも同じ結果が出る。8時に俺は毎日8時に一人で広い空を眺めなら外でコーヒーを飲む、という格好をつけて、アパートの外でコーヒーを飲み始める。飲みながら新しい車を探す。NISSANのGTーRが4台も駐車場にあるものの、女っぽいピンクのWAGONっていう訳分からない英語の名前を与えられた自動車はどこにもない。彼女はもしかして、本当に俺の想像だったのか。そう思って、冷たい風に吹かれながら温かいコーヒーを口にする。そして再びアパートに入り込み、誰もいない空間に「ただいま」と声をかける。当然ながら、返事は戻ってこなかった。
俺は彼女を忘れることにした。幻の美人を忘れて小説に集中する、と。そうやって僕はいつものようにロフトに上がり、パソコンを開き、イヤホンを耳に深く入れる。村上春樹の文に何回も視線を走らせる。何でここが「が」なのかな。何でここは「は」なのかな。俺にはさっぱり分からない。ああ、難しい、日本語は。ちょっと休憩しよう。と思ってイヤホンを抜くと、今度はHな声が耳に届くのだ。
やっぱり本当だった!と最初の一秒目の喜び、それから二秒目の悲しみ。あぁ、ああ、もっと!早く!これはまた困った状態だ。今までは俺は受験生のように静かに勉強していたので、壁の向こうにいる二人、あるいは三人はきっと誰もいないと思い込んでいるのだ。急に立ち上がって音を立てると、彼女はイケなくなってしまうかもしれない。俺は彼女にそういう中途半端な経験させる訳にはいかない。待つしかない。と思い、俺は20十分程性欲の声を浴びる。どう覚えればいいのか。発情した方がいいのか。うんざりした方がいいのか。彼女のボーイフレンドのスタミナに感動した方がいいのか。隣に行って、出来れば参加させていただきたいんですけど、と言った方がいいのか。結局何すればいいのか分からなくて、心の中に芽生える不安と興奮をこの文章にしてみた。
あ、今終わったとこ。



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